●そうやすやすと月9のヒロインにはなれない
私はスロバキアのスケート場に来ていた。
ヨーロッパ→スケート→お洒落な休日という安易な思考が私をここへ導いたのだ。
異国のスケートリンクをすいすい滑っている、まるで月9ヒロインのような自分を想像した。
スケート場へ着くと、老若男女で溢れていた。
主に親子連れが多い。
例えるならば、週末のイオンのような光景である。
受付のおばちゃんとおじちゃんに英語が通じず困っていると、
うしろに並んでいたおねえさんが通訳を買って出てくれた。
チケット購入からスケート靴のレンタルまで面倒をみてくれ、
彼女のブロンドヘアーとふくよかな体型も相まってか、まるで女神のようだった。
突如として現れた女神に感謝しつつ、スケート靴に履き替えた。
履き替えている途中、嫌な予感がしていた。
予感はすぐに的中した。
氷の上にすら辿りついていないのに、二足歩行ができない。
そんな私を見て笑っている、
こっちでも笑っている、
子供も笑っている。
いつの間にかスロバキアの笑い者になっていた。
やっとの思いでスケートリンクに辿り着くも、
想像していたものとは遥かにかけ離れた姿がそこにあった。
ひーひー言いながら地道に進んでいると
すぐ隣をちびっこスケーターが私の何十倍もの速さで横切っていった。